人間のテンポ感覚について
音楽における速さの感覚、特に演奏中の速さ、テンポの感覚はその時の体調というか、心拍数によって大きく変わるらしく、ドキドキしているときには落ち着いている時より速めのテンポで弾きたくなるのが普通です。たまに、この逆に、緊張するとゆっくりとなる人もいるようで、私のピアノの先生、フ...
大音楽家の意外な側面
ドイツで音楽をやっていると、決して良い事ばかりではありませんが、たまには面白い経験をします。その一つは、雲の上の存在のような世界的名手の素顔にふれる機会がままあることです。 アンドラ―シュ・シフが譜めくりを怒鳴りつけて聴衆をあきれさせた話は以前に書きました。今回は、最近亡く...
落ち込む?
今日のライプチヒ新聞の文化欄に、まるで今まで読んだこともないひどいコンサート批評が載っていました。題からして凄い。Deprimierend、落ち込む。そしてコンサートグランドを演奏中のピアニストとバックのオーケストラの写真が出ています。読んでみると、題から想像するよりもっと...
初見演奏 その2 (2006年執筆)
以前に書いたとおり、私は初見演奏が得意です。その点だけは、誰にもまけない自信があります。それだから、音楽大学のピアノ以外の楽器の入試では大変重宝がられます。受験生がどんなに珍しい曲を持ってきてもたいてい伴奏をつけることができるからです。...
初見演奏 その1(2006年執筆)
私は初見演奏が得意です。どのくらい得意かというと、今まで同じ程度に初見演奏をできる人に出会った事がないくらいに得意です。そして、これはずっと昔、子供のころからそうだったので、既に小学校一年生の時には、音楽の時間にピアノの苦手な男の先生に代わって伴奏していたし、小学校上級生に...
室内楽グループは持続するのが難しい(2006年執筆)
京都ユーゲント、スフィンクス、メリアン、ポンテュス、ノイエ・ライプチガー、コン・スピリート。これらの言葉の共通点は何でしょう。想像がつきますか? 何を隠そう、これらは全て、私が属していたピアノトリオの名称なのです。あまりにも短命だった為に命名するに到らなかったトリオも含めれ...
ある国際コンクール伴奏者の雑感(2006年執筆)
私は音大でコレペティシオーンという科を担当している為、しばしば弦楽器などのコンクールの伴奏を頼まれます。この仕事は短期間に色んなレパートリーをこなさないといけない、責任が重い、など大変なわりには、特別ギャラがいいわけでもなくて、美味い仕事とはいい難いのですが、反面、優秀な若...
ザクセン州最古のオルガン (2006年執筆)
私のヨーロッパ便り、初回の話題は、先日経験した古いオルガンについてです。 10月初めに、ライプチヒから東へ30km程離れたところにある田舎村、ポムセンの小さな教会で「ザクセン州に現存する一番古い演奏可能のオルガン」(1671年製)の修理完成記念ミサがあり、その後、2日間に渡...
演奏会裏話〜ピアニストの本音〜 第7−9話 (2000年頃執筆)
「振袖での演奏」 バイエルン州の都市、アシャッフェンブルクに古くからの友人のソプラノ歌手が住んでいる。彼女は私より10歳以上年上でその地方の名士であり、声の方はもうあまり出なくなっているが、しばしば自分で大衆受けのする企画を立て、知人の音楽家を雇って演奏会を主催している。そ...
演奏会裏話〜ピアニストの本音〜 第4−6話 (2000年頃執筆)
「舞台照明の重要さ. 鍵盤も手も真っ赤っか」 フランクフルト郊外の小都市バート・ホンブルクでは毎年、夏の最中に大規模なお祭りが催される。バート何とか、という名前の町はすべて温泉町か、もと温泉町であり、過去には有名、無名の政治家や芸術家が保養に訪れて栄えていた場所である。しか...